たとえば、現状の包装や製品には特にダメージなどの問題が発生していないとします。ではそれで安心でしょうか?そうとは言い切れません。ダメージが発生していないのは、必要以上に緩衝材を使用しているからで、『実は知らないうちに大きなムダも一緒に運んでいるかも知れない』のです。製品強度や輸送環境の数値化ができていないと、そもそも過剰包装なのかどうかの判断すらつけられないのです。
「世界標準の輸送包装開発」とか「世界基準の包装評価試験」などと言うと、何かとても難しいことをしなければならないかのように聞こえます。でも、そんなことはありません。試験の目的は、その結果を数値化して評価することにあります。やるべきことはシンプルです。シンプルですが、きちんとした手順を踏んで実施することが肝要です。そして、以下がその手順です。
(1)輸送環境の定義
輸送環境記録計を用い、自社の輸送ルートの振動や衝撃などの環境を実測する、または、公的試験規格などの入手可能な情報を利用し、輸送環境を振動や衝撃の数値として定義する。
(2)製品強度試験-衝撃
衝撃試験を実施し、衝撃に対する製品強度を、製品が耐えられる衝撃加速度や衝撃速度変化値の限界値として定義する。
(3)製品強度試験-振動
振動試験を実施し、振動に対する製品強度を、製品の共振周波数や振動応答加速度値として定義する。
(4)製品の改良
製品の衝撃や振動試験の結果より、製品側で改良すべき部分は改良する。
(5)緩衝材の性能評価試験
緩衝材性能試験を実施し、想定される輸送環境と製品強度のギャップを埋めるような緩衝材の、緩衝性能を定義する。
(6)包装設計
上記(1)~(5)の情報を総合して、最適な包装設計をおこなう。
(7)試作包装の性能評価試験
評価用の試作品に対し、(1)で定義された輸送環境条件を基にした、「振動」、「落下衝撃」、「水平衝撃」、「圧縮」などの性能評価試験を実施する。
(8)改善点のフィードバックと再試験
改善点があれば、設計変更にフィードバックする。量産試作品が合格するまで、(7)の評価試験を実施する。